スズキのジョアン・ミル#36選手がライドハイトデバイスが導入されたと、とっても喜んでますが、そんなにスゴイものなんですか?
スゴイというか「やっとみんなに追いついた」という感じでしょうか。ちょっと地味なデバイスですが、ご紹介したいと思います。
ウェルカム!
管理人のMoto次郎です。
MotoGP2021年シーズンも後半戦に突入し、話題豊富な中、スズキのジョアン・ミル#36選手の快進撃で、ライドハイトデバイスが、再注目されています。
このデバイスを最初に手掛けたドゥカティは既に2019年シーズンからテスト使用を始めてますので、少々今更感はあるのですが、スズキのバイクが一気にタイムアップしたのは事実なようですから、この辺でおさらいしておきたいと思います。
ってなことで、
今日は、スズキが新たに導入したライドハイトデバイスについて、ご紹介していきたいと思います。
ちなみにホールショットデバイスについては、こちらをどうぞ。
スズキ ジョアン・ミル#36選手のコメント
スズキのジョアン・ミル#36選手は、昨年2020年シーズンのチャンピオンであるにも関わらず、前半戦はとっても苦戦していまして、について、随所でコメントしライドハイトデバイスを熱望していました。
「他のバイクメーカーは全部使っているのに、スズキだけが無いんだ」と。
そして、夏休み明けの第10戦スティリアGPから、ついに待望のライドハイトデバイスが新導入されました。
そんな導入直後のタイミングで、ライドハイトデバイスの操作を捉えたのが、この動画です。
「アレッ、アレッ」という感じで左手を動かし、その後、左ハンドル付近をチラッと目視。
その後、「スッ」という感じでバイクの後部が沈み込むのが分かります。
全然使い慣れていない感じが伝わってきます。笑
動画は、金曜日のFP3ですが、この時点で、全然使いこなせていない感じを見せていながら、予選では5番グリッド獲得、そして、決勝では2位フィニッシュと、しっかり結果を残してしまうんですから、ホントに素晴らしい。
そして、喜びのコメントです。
新導入のライドハイトデバイスについても、とっても気に入った様子です。
バイクを開発している人たちも、モチベーション爆上がりなことでしょう。
MotoGPクラスでは、すでに有って当たり前的なデバイスでしたが、こんな経緯で、ライドハイトデバイスについて、再度、注目が集まることとなりました。
それでは次に、ライドハイトデバイスでどんな効果が得られるのかご紹介します。
ライドハイトデバイスの効果
ジョアン・ミル#36選手がとっても喜んでコメントしている通りですが、主な効果はこんなものです。
- コーナー立ち上がりの加速が改善される
- コンマ数秒の差が出る
「コーナー立ち上がりの」というところが、ポイントです。
一般的に、コーナーリングは、3分割で語られる事が多いです。
①減速(ブレーキ)→ ②旋回(曲がる) → ③加速(立ち上がり)
①減速→②旋回の部分では、バイクのフロントが低く/リアが高い姿勢が良い(曲がりやすい)とされています。
そして、②旋回の部分では、バイクの姿勢が平行に。
そして、②旋回→③加速の部分では、徐々に、フロントが上がり/リアが下がっていきます。
ライドハイトデバイスの効果は、
この「②旋回→③加速」の部分で、自然にリアが下がっていく動きを、デバイスを作動させることで意図的に作り出し、最も加速が良くなるバイクの姿勢に変化させることで、コーナーからの立ち上がり加速を改善するというものです。
バイクのリアが低い状態というのは、②旋回には不利(曲がりにくい)ですから、ライドバイトデバイスを作動させるタイミングは、とっても重要です。
デバイスを作動させてリアが下がっても曲がりきれる というタイミングを見極めて、デバイスを作動させなければいけません。
作動タイミングが遅ければ、単純にデバイスの効果が最大限発揮されなくなりますし、
作動タイミングが早ければ、曲がりきれなくなりますので、逆に加速が遅れるかコース外に飛び出すかということになってしまいます。
また、ライドハイトデバイスが作動したときの、リアの高さの設定もかなり重要でしょう。
低ければ低いほど良いというものでは無く、フロント側とのバランスや、リアサスペンション自体とのバランスも考えなければいけません。
そして、コーナーによっても①減速/②旋回/③加速のリズムが異なりますから、最も効果が出やすい、ストレートの直前のコーナーの状態に合わせて設定することになると思われます。
そんなデバイスですから、どんな風に使っているのか、ライダーによって個人差があるかもしれませんね。
さらに、①減速(ブレーキング)時に使うという情報も有ります。
②旋回に入る直前にデバイスを解除して、フロント低/リア高の状態に変化させるのでしょうか。
③加速のときよりももっとタイミングがシビアになりそうですね。
そして、そんな究極の操作の結果に得られる効果が、
なんと、コンマ数秒!
ボタン操作とかでもたもたしてたら、とっくにコンマ数秒なんて失っちゃいそうですね。笑
ホントにスゴイ世界です。
それでは次に、ライドハイトデバイス自体がどんな仕組みになっているのか考察してみます。
ライドハイトデバイスのメカニズム・仕組み(参考情報)
コーナー立ち上がりの加速を改善して「コンマ数秒」の差が得られるライドハイトデバイスですが、デバイス自体はどんなものなのでしょうか。
これには、ホールショットデバイスが深く関係しています。
ホールショットデバイスについては、頑張ってご紹介しましたので、是非こちらの記事を参考にして下さい。
ホールショットデバイスを動作させて、スタート時にバイクの車高を低くするのは、もうおなじみですが、ライドハイトデバイスはこのホールショットデバイスのリア側を走行中に作動させているわけです。
ですから、「ホールショットデバイス2.0」なんて呼び方もあるようです。
そして、実は、ライドハイトデバイスはMotoGP界で使われ出してから既に数年が経っています。
一番導入が早かったのがドゥカティですが、これまでの経緯はこんなかんじです。
ドゥカティでは、
- 2018年に、ホールショットデバイスの実戦テスト
- 2019年に、ホールショットデバイスの本格導入
- 2019年に、ライドハイトデバイスとしての実戦テスト
- 2020年に、ライドハイトデバイスとしての本格導入
と、進んできています。
ライドハイトデバイスとしては、これまであまりフィーチャーされずにいましたが、2021年シーズンで既に3シーズン目ですから、かなり熟成が進んでいることでしょう。
現在まで、その具体的な動作原理やメカニズムは明らかにされていませんが、MTB(マウンテンバイク)のシェイプシフターが、原型だと言われています。
MTBのシェイプシフターの作動動画はこちらを参考にして下さい。
そして、MotoGPライダーたちは、こんな感じのボタンやレバーを操作して、ライドハイトデバイスのON/OFF動作をしています。
電子制御で自動的に作動させるのはレギュレーション的にNGです。
ドゥカティの左側ハンドル付近のボタンの画像です。
紫色と白色の台形ボタンがライドハイトデバイス制御用とのこと。(2020年4月情報)
ブレーキング/コーナーリング/加速しながら、とてつもないGが体にかかっている状態でタイミングよくこんな操作までやっていると考えると、ホントにスゴイ世界ですよね。
ちなみに、Moto2クラスとMoto3クラスでは開発費が高額となるという理由で、ライドハイトデバイスの使用は禁止されています。
まとめ
- ライドハイトデバイスとは「コーナー立ち上がり加速」が改善し、「コンマ数秒」速くなる新デバイス
- MotoGPライダーたちは、ボタンやレバーでライドハイトデバイスのON/OFF操作
- 2021年シーズン第10戦スティリアGPから、スズキのバイクにライドハイトデバイスが導入し、全6バイクメーカーが導入完了
- ライドハイトデバイスのメカニズムはMTBのシェイプシフターが原型というウワサ
元々レース後半の粘り強い走りに定評があったスズキのお二人に、一発の速さを追加するようなデバイスは、効果抜群のように思えます。
デバイス自体の熟成が進み、ライダーが更に効果的な操作ができるようになると、ますます強くなってくるのではないかと思われます。
前半戦にあまり目立った活躍が有りませんでしたが、後半戦を面白くしてくれそうな予感です。
中上貴晶#30選手がマルク・マルケス#93選手のリアブレーキ操作のデータを見て参考にしてから一気にレベルアップしたのは有名な話となりましたが、そのときにも、『そんな急に世界一レベルの操作ができるようになるものなの?』と、驚いたのですが、ジョアン・ミル#36選手も、すぐにライドハイトデバイスを使いこなしてしまいました。
普通、頭で分かっててもなかなか理想通りにできない、なんてのが一般人の感覚だとおもうのですが、やっぱり、なにか超越してしまってますね。
ってな事で、
それでは、
Have a nice MotoGP!
~最後に~
お気軽にコメントなどいただけるとうれしいです。
扱ってほしいテーマなどがありましたら、ぜひ、教えて下さい。
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