管理人のMoto次郎です。
2021年シーズン第7戦カタルーニャGPで、また、安全性に関する事件が発生してしまいました。
一週間前に、レース中のアクシデントでライダーが亡くなったばかりにも関わらず。
この件は、決してこのまま終わらせては行けないと考え、記録を残そうと思います。
事件の当人は、MotoGPクラスの#20ファビオ・クアルタラロ選手です。
レース中に、レザースーツのファスナーが開いてしまったにも関わらず、そのまま走り続けてしまいました。
ショートカットのペナルティと合わせて合計6秒加算を受け、順位が下がりましたが、公式には、これ以上の追求は無さそうです。
しかし、私Moto次郎的には、この件に関して、ライダー本人よりも、チーム関係者や運営側の問題が大きいと考えています。
二度とこのような事が起こらないようなルール作りを、絶対にお願いしたいです。
当日の経緯
事件は、2021年シーズン第7戦カタルーニャGPの決勝レース中に発生しました。
ファビオ・クアルタラロ選手は、初日から絶好調。
5戦連続のPPを獲得。
ですが、決勝レースは、序盤からの独走を狙ったものの、うまく抜け出せず、トップ集団での争いが終盤まで継続しました。
そして、ラスト4LAPというタイミングで、1kmを超えるメインストレートから1コーナーへ向けたブレーキングで、オーバーラン。
グラベルに出ることは回避したものの、ロングラップペナルティエリアを利用して、コースへ復帰。
(この行為が、後にショートカットと判断され、3秒追加のペナルティとなります。)
そして、その後です。
なんと、走行中のファビオ・クアルタラロ選手から、胸のプロテクターが外れ、コース上に飛んでいきました。
(これは、不本意に飛んでしまったのか、故意に外したのかは、語られていません。)
???と思っていた瞬間、レザースーツのファスナーが全開になっている様子が、中継されました。
ファスナーは、片手では閉められるはずもなく、
アクセルを離したくないファビオ・クアルタラロ選手は、ファスナー全開のまま走り続けます。
もちろん、ファビオ・クアルタラロ選手は、いつもどおり、レザースーツの中の上半身は素肌です。
そして、そのまま4LAPを走り続け、3位でフィニッシュしました。
レース終了後、すぐに、ショートカットに対するペナルティとして、3秒が加算され、4位の判定に。
4時間後に、レザースーツの着用についてもペナルティとされ、さらに追加で3秒の加算となり、現在、6位の判定となっています。
以上が、当日の概略経緯です。
関係者の発信内容
この件について、関係者から様々なコメントが出ています。
ファビオ・クアルタラロ選手
当初は、ペナルティに対して不満を表していたものの、その後、反省の言葉を発信しています。
ただ、ショートカットについてのペナルティについては、どうしても納得がいかない様子。
他のライダー達の反応
他のライダー達からも、この件に関して、さまざまなコメントが出されていますが、やはり概ね、ファビオ・クアルタラロ選手はレースを止めるべきだったというのが大半です。
ケーシー・ストーナーさん(MotoGPクラス 元チャンピオン)
失格を意味する黒旗が振られるべきだったと、SNSでコメント。
ジョアン・ミル選手
胸部プロテクターを投げ捨てたことは危険。他のライダーを危険に晒したと思う。
今後の為に罰則を作るべき
ヨハン・ザルコ選手
彼自身の安全のためにも”黒旗を出して失格にするに値するものだった。
もし彼があの状態でクラッシュしてスライドしたなら、それは凄く危険なことになってしまう。
マルク・マルケス選手
黒旗を出して失格にすることは不公平だが、安全上の理由で自らリタイアすべきだった。
バイクに何か物がぶら下がっている様なときは、停まって安全を確保しなくちゃいけないし、それができないならリタイアするべきだから、彼はそうすべきだった。
アルパインスターズ(レザースーツメーカー) コメント
レザースーツのファスナーが開いてしまった件について、メーカーで原因調査が行われました。
しかし、ファスナーやエアバッグについて、異常無しというコメント。
調査は継続されるそうですが、恐らくはっきりした調査結果は発表されないまま終わる予感がします。
仮に、公に調査結果が発表されなくても、安全性向上の改善がなされることを期待します。
Moto次郎的所感
以上が、カタルーニャでの出来事から、1週間後の状況です。
最初にも書きましたが、私Moto次郎的には、
「チームや運営側が何かしらの安全対策を指示すべきだった」と考えています。
MotoGPライダー達は、極限に集中した精神状態でレースに臨んでいます。
ですから、少しぐらいのアクシデントが有っても、できる限りレースを継続しようと判断します。
2020年シーズンに、マーベリック・ビニャーレス選手がブレーキのトラブルをかかえながら走り続け、結局、200km以上のスピードの中でバイクから飛び降りることになった件も同様です。
冷静に考えれば、ブレーキのトラブルがどんなに、大きな出来事に発展してしまうのかは、簡単に分かります。それでも走り続けてしまう。それがMotoGPライダーです。
今回の件について、ファビオ・クアルタラロ選手も、冷静になった後には、「レースを止めるべきだった」と表明しています。
それはそうでしょう。
意図的かどうかは分かりませんが、胸プロテクターがコース上に飛んでいき、それが後続のライダー達を危険にさらしてしまったこと。
もし、レザースーツのファスナーの開いた状態で、転倒でもしたら、大ケガを負っていたこと。
冷静に考えれば、これらの危険行為と比較して、1レース分のポイントを落とすことなんて、比べる価値もありません。
でも、やはり、ライダーは、レース中はレースに集中してしまっているということでしょう。
ですから、チームや運営側から、何かしらの指示をすべきだったと思うんです。
ボクシングでも危ないと思えば、セコンドがタオルを投げ込んで、試合を終わらせます。
同じような対応が必要だったと思うんです。
ファスナー全開の状態で、ホームストレートを3回も走ってるんですから、
その間に、運営側からフラッグを掲示することも、サインボードで指示することもできますし、ダッシュボードにメッセージを出すことも出来たでしょう。
それを何もせずに、傍観し、レース後にチームメンバーは、ファビオ・クアルタラロを慰めるような様子で迎え入れていました。
どういう考えなのでしょうか。
私には「アンラッキーなアクシデントの中、ポイント獲得して上出来だ」みたいにみえてしまってしょうがありません。
それとも「無事に戻ってくれて良かった」ぐらいの感じなんでしょうか。
チームや運営側の意見を、是非、聞いてみたいです。
また、ショートカットのペナルティについて、あまり話題になっていないく、更に、ファビオ・クアルタラロ選手はこの判定に不満をもっているようですが、私Moto次郎的には、これも安全策として、絶対に必要な対応だと考えています。
あんなスピードで、あんな接近戦ができるのは、全員が同じ考えでバイクを走らせているからです。
つまり、「コース幅の範囲で、レース距離を最速で走りきる」という考えをもって全員が走っているということです。
もし、コース幅を超えた走行にペナルティが与えられなければ、違う考えで走るライダーが現れ、周囲のライダーを危険にさらします。一か八かの勝負のタイミングでは、意図的にコース外を走り周囲のライダーのリズムを崩すなんて作戦が出てくる恐れもあります。
トラックリミットが厳格化されていることからも、コース外を走る行為は、危険が伴うことが明白です。
「少しのミスは許されるべき」というのが、ファビオ・クアルタラロ選手の意見ですが、オーバーランから安全にコース内に戻ってこれるようなコースレイアウトになっていること自体、すでに、「少しのミスが許されている」と考えてほしいです。
前戦のレースで、悲しい出来事があったばかりで、すぐにこの様な安全に関わる事件が起こってしまいました。
MotoGPファンをがっかりさせないで欲しいです。
素晴らしいレースを見せてくれるライダー達を守るためのルール作りを、絶対にお願いしたいです。
以上
2021/6/19 追加記事
2021/7/4 追加情報
次戦のドイツGPでは、胸のパーツが大きいサイズに変更されていました。
それから、後から気づきましたが、下の写真はファスナーが完全に上まで上がっていないです。
2021/8/7 追加情報
ずいぶん時間が経っていますが、坂田和人さんがブログに取り上げています。
2021/8/15 追加情報
レザースーツなど装備の不備に対して、ダッシュボードにオフィシャルから警告メッセージが出される事になりました。
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